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『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった <連載を獲れなければ漫画家を辞める覚悟の1年>

『鬼滅の刃』が今、空前のブームを呼んでいる。

Photo_20210301144502  

しかし、連載開始に至るまでの道のりは
決して平坦ではなかった。
いかにして『鬼滅の刃』は生まれたのか。

誕生ヒストリーを明かしてくれたのは、
著者の吾峠呼世晴氏と二人三脚で走り続けた
『鬼滅の刃』初代担当編集・片山達彦だ。

『ブラッククローバー』『呪術廻戦』など
「週刊少年ジャンプ」の人気タイトルを
担当してきた片山だけが知る“舞台裏”とは?


『鬼滅の刃』の骨肉となったであろう
『ジョジョの奇妙な冒険』『HUNTER×HUNTER』
『銀魂』『僕のヒーローアカデミア』など
歴代『ジャンプ』漫画とのリンクや、
主人公・竈門炭治郎の誕生秘話、
人気キャラクター・冨岡義勇の衣装の秘密まで、
ファンならずとも必読のインタビューをお届けする。



Q: 片山さんが吾峠呼世晴先生に
   出会ったのは、いつでしょうか?

『肋骨さん』という作品を描き上げた 2014 年です。



Q: 第70回JUMPトレジャー新人漫画賞佳作を受賞した
     処女作『過狩り狩り』から数えて、3作目ですね。

はい。『過狩り狩り』当時は
別の編集者がついていたんですが、
彼が副編集長になるタイミングで、
僕が担当になりました。

『過狩り狩り』は、
『鬼滅の刃』の前身になった作品でもあります。

先生は「どうせダメだろう」と
処分しようと思っていたらしく、
そのときにご家族から
「どうせならいちばん好きな雑誌に送ってみたら」
と後押しされて、初めて『ジャンプ』に投稿した
とおっしゃっていました。



Q: 片山さんは『過狩り狩り』を読んで、
    どんな感想を持ちましたか?

正直に言うと、わかりにくいなと(笑)。
1回目に読んだときは
そこまで面白さがわからなくて、
2回目に初めて構成や振りのうまさに気づきました。

ただ、圧倒的な才能は周りも認めていましたし、
僕も感じていました。



Q: どんなところに才能を感じたんですか?

セリフの力が圧倒的ですよね。
あんな言語体系、あまり見たことがない。

先生のセリフは、借りものじゃないんです。
『ジャンプ』では「キャラクターを立てよう」
と耳が痛くなるほど指導されます。

しかし先生は
「そのキャラクターが言っているな」
と感じられるセリフを自然と書けていた。
そこにいちばん才能を感じました。



Q: 『鬼滅の刃』を読んでいても、
      “キャラ立ち”を感じます。

僕が「先生は本当にスゴい!」
と圧倒されたのは、
『鬼滅の刃』の第8話。

倒した手鬼に対し、
竈門炭治郎が手を握るシーンです。

それまでも他の新人作家さんとは
一線を画しているとは思っていましたが、
あそこで改めて、
こういうキャラクター造形ができるところが、
この人の才能なんだと感動しましたね。



Q: 炭治郎の優しさがよく表れていますよね。

じつは吾峠先生は打ち合わせの際、
あの手を握るくだりを
「少年漫画らしくないからカットしようかな」
とおっしゃっていたんです。

それを聞いて僕が、
「ここだけは絶対に入れてください。
こんな主人公見たことないです。
これが炭治郎ですよ!」
と熱弁をふるった記憶があります(笑)。



Q: 漫画をつくるうえで、
    吾峠先生とはどんな形で
    やりとりをしていたんですか?

『鬼滅の刃』の連載が始まるまで、
先生は地方にいらっしゃいました。

そのため電話で打ち合わせをし、
そのあとネームをeFaxで受け取って、
添削して、また電話でやりとりして…
という感じですね。



Q: 吾峠先生はネームを描くのは速いほうですか?

とてつもなく速いです。
あとで聞いたら、
寝ないで描いていたことも多かったそうで…

その尋常ではない速度から、
絶対にプロになるんだという熱意を感じました。



Q: 片山さんから見て、
    吾峠先生はどんな方ですか?

純粋な人ですよね。
そして言葉の本質を見ている人です。



Q: 言葉の本質?

何かのやりとりで
「主人公をカッコよくしましょう」
という話になったんですよ。

すると吾峠先生が
「カッコいいって何ですか?」と。

たしかに何だろうと
思っていろいろ話をしてみたら、
吾峠先生のカッコいい見た目の一つに
『ゴルゴ13』があったと判明。



Q: ゴルゴ!

そして“中身”は、
とある漫画で読んだそうなんですけど、
車に轢かれて死んだ猫を、
みんなが「気持ち悪い」
と引いた目で見ている中、
汚れも気にせず抱えて持っていける男だと。

要は、自己犠牲ですよね。
そこで初めてふたりのあいだで
共通認識が持てたんです。



Q: 面白いですね。

誤解がないように言っておくと、
吾峠先生は決して揚げ足取りで
聞いているわけじゃないんです。

先生は物事の真理が知りたいだけ。
なあなあの会話は通用しないし、
わからないことは恥ずかしがらずに
きちんと質問される。

先生とのやりとりを通じて、
僕自身も勉強になりました。



Q: 片山さんから見て、
    吾峠先生はどんな作品から
    影響を受けていると感じますか?

『ジャンプ』漫画は全般的に読んでいる
とおっしゃっていましたし、
何かしら影響を受けていると思いますけど、
とくに『ジョジョの奇妙な冒険』
はファンだとおっしゃっていますね。

たとえば呼吸法は『ジョジョ』の
波紋の呼吸に通じるところがありますし、
不死身の鬼というモチーフも
『ジョジョ』を彷彿とさせるものがある。



Q: 添削という話が出ましたが、
    修正のリクエストに対して
    吾峠先生は柔軟な方ですか?

ケースバイケースですね。
たとえば、藤襲山の最終選別
(第6話から第8話)のときに
「冨岡義勇が見守っているのはどうですかね」
と提案してみたら、

「義勇はすごく有能な剣士なので、
こんなところで審査する立場ではないです」と。

そこをなんとかとお願いしても、
決して首を縦には振りませんでした。

そもそもこの鬼殺隊入隊のための
修業のエピソードも、
序盤に置くには引きが弱いかなと思い、
もう少し短くできないかと相談したんです。

そのときも
「普通の人間がそんなに
すぐ強くなるわけないと思います」
と、決してご自身の信念を
変えることはありませんでした。

だからといって頑固というわけではありません。
たとえば鱗滝(左近次)さんは、
当初は天狗のお面をつけていなかったんですよ。



Q: え、そうなんですか?

初めにネームを見せてもらったときは、
普通のおじいさんでした。

ちょっとインパクトがないですよね
という話をしたら、
原稿の段階ではお面をつけていた(笑)。

聞いてみると、
「よいのが思いつかないんで、
とりあえずお面をつけてみました!」
とおっしゃって。

だから、鱗滝の素顔を知っているのは
僕だけなんです(笑)



Q: 見てみたいです(笑)

なるほどと思ったら柔軟に対応してくれますし、
自分が信念を持って描いているところに
関しては絶対に譲らない。

物語として成立しているかどうか、
をいちばん大切にされている方なんだと思います。



<<連載を獲れなければ漫画家を辞める
      ――覚悟の1年>>

Q: ここからは『鬼滅の刃』連載開始に
    至るまでのお話を聞いていきたいと思います。
    まずは『ジャンプ』連載までの
    システムを教えてもらいますか?

編集部内で連載会議があって、
そこで連載の可否を決定します。

連載会議に出席できるのは、
編集長、副編集長、班長以上のメンバーで、
人数は10人ぐらい。

最終的な決定権は編集長にありますが、
独断で決めるというよりも、
何時間もかけて議論を重ねながら、
みんなの総意で連載が決まるシステムです。



Q: その連載会議には
     何話分のネームを提出するんですか?

3話分です。



Q: 『鬼滅の刃』の連載が始まったのが
     2016年11号から。それまでのあいだに
    『少年ジャンプNEXT!!』に『文殊史郎兄弟』、
    『ジャンプ』本誌に『肋骨さん』、
    『蠅庭のジグザグ』が読み切りとして
     掲載されましたが、読者の反応はいかがでしたか?

悪くはないが、もう一つ人気が欲しい…
といったところでした。

編集部の反応もそのような感じで。

連載会議でもいろんな連載ネームを
出していたんですけど、
なかなか通らなかったんです。



Q: 連載会議に落ちたとき、先生はどんな反応を?

最初に落ちたときは、
大変ショックを受けていたかもしれませんが、
それ以降は一切弱いところは見せませんでした。

「次また頑張ります」と、
鋼の精神で黙々と新しいネームを送ってくれましたね。



Q: 聞くところによると、
    一時期は「漫画家を辞める」
    とおっしゃったこともあったとか。

2015年のあいだに連載を獲れなければ辞めると。
吾峠先生は、作家になるべくして生まれた人。

だから何としてでも連載会議を通るような
ネームにしなくてはと焦りましたが、
『蠅庭のジグザグ』、『鈍痛風車』と
連載ネームが続けて落ちてしまい、
もうあとがなかった。

そこで、『過狩り狩り』を読んだときに
感じた課題に立ち戻ってきたんです。



Q: というと?

吾峠先生は、誰もが認める才能の持ち主。
だからこそ、その作家性を生かしたいと
思ってやってきたんですが、
マニアックな方向に寄りすぎてしまった。

好きな人は好きだけど、
万人受けはしないのかなと。

セリフの力は圧倒的だし、
キャラクターの情緒を
感じさせる描写に長けてはいる。

しかし、『ジャンプ』の対象読者は小中高生。

僕が『ブラッククローバー』の
担当をしていたこともあるんですが、
小中高学生が読んで理解できることが
大切なのではと考えるようになりました。



Q: そこから、片山さんはどうされたんですか?

とにかく周りの先輩にアドバイスを求めました。
そこで出てきたのが、モチーフの話です。



Q: モチーフ?

みんなが知っている要素を使わないと
わかりにくいよねと。

『ONE PIECE』だったら海賊。
『NARUTO -ナルト-』だったら忍者と学園モノ。

歴代のヒット作は、
みんなが知っている要素を使って
新しいものを創り出している。

そういうものが吾峠先生には
必要なんじゃないかと言われました。

とはいえ、何か新しいモチーフを
探すのは相当困難な話。

悩んでいたときに、そうだ、
『過狩り狩り』があると思い出したんです。

『過狩り狩り』はみんなが知ってる
「吸血鬼」のお話で、
しかも「大正時代」、「刀」という
わかりやすいモチーフもある。

これならいけるんじゃないかと。



Q: その提案を受けて、先生は何と?

やってみましょうとすぐに取り掛かってくれました。

僕が『過狩り狩り』を思い出したのも、
じつは『僕のヒーローアカデミア』
の話があったんです。

『ヒロアカ』は堀越(耕平)先生が
デビュー翌年に発表した
『僕のヒーロー』という読み切り漫画が
前身になっている。

よくいう話ですが、
作家は迷ったら原点に帰ることが
大事なんじゃないかと。


Photo_20210301144501


<<もっと“普通の人”を
  ――炭治郎は最初脇役だった>>


Q: そうして生まれたのが、

    前身である『鬼殺の流』ですが、
    連載会議では残念ながら落選。

主人公は盲目、隻腕、両足義足という設定で、
「世界観のシビアさと主人公の寡黙さ」
が落選の理由だったと
公式ファンブックで語られていました。

そうですね。ただ、
読みやすくなったと世界観に対する
一定の評価は得ていて。
あとは主人公のキャラクターだと。

そして、
また先輩からアドバイスをもらったんですよ。



Q: それはどんなアドバイスですか?

その先輩の私見ですが、
『HUNTER×HUNTER』は変わったキャラクターが
たくさん出てくるものの、

主人公のゴン(=フリークス)は普通の人。
だからこそ読者も感情移入しやすい。

そして、ゴンが中心にいると
他のキャラクターの面白さが引き立つんだ、
というものです。

吾峠先生も同じで、中心に普通の人を置いて、
周りに異常性のあるキャラクターを
配置するとちょうどいいのではないかと。

そこで生まれたのが炭治郎でした。



Q: ぜひその話、
    もっとくわしく聞かせてください。

じつは炭治郎というキャラクター自体は、
もともと先生の頭の中にはあったそうなんです。
ただ、先生の中でサブキャラだったんですよ。



Q: え、そうなんですか。

連載ネームが落ちた後に、
主人公を別の人物に変えようという話になり、
「この作品の中に、
もうちょっと普通の子いないですかね」
と聞いてみたんです。

すると、
「炭を売っている男の子がいて、
その子は家族全員殺されたうえに妹が鬼になっちゃって。
男の子は妹を人間に戻すために鬼殺隊に入るんです」
と話し始めたんです。

それ、めちゃくちゃ主人公じゃないですかと。

宿命を背負ったキャラクターは、
物語を動かす推進力になる。

その子を主人公にして
もう一度書きましょうと先生に提案しました。
そうして生まれたのが、『鬼滅の刃』でした。



Q: 初めて『鬼滅の刃』のネームを
    受け取ったときのことは覚えていますか?

覚えています。
たしか他作品の原稿を受け取りに行った
タクシーの中だったと思うんですが、
第1話の義勇の
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
というセリフにしびれましたね。
なんだこれ、こんなセリフ見たことないぞと。

話も非常にわかりやすくなっているし、
炭治郎も好感が持てる。

だけど何よりインパクトがあったのは
義勇のあの一言。

はからずも『過狩り狩り』を
読んだときから感じていた
セリフの力に圧倒されたという感じですね。
これは(連載会議に)通るだろうと確信しました。



Q: その連載ネームと、
    実際に私たちが読んでいる
    第1~3話に違いはあるんでしょうか?

ほとんどないです。
デザインがちょっと違うぐらいで。



Q: デザインとは?

連載ネームでは義勇が着物だったんです。
それを見て「もうちょっと大正感が欲しいですね」
という話を僕から先生にしました。

次に先生が描いてきたのが、
今の詰め襟スタイル。

詰め襟に羽織りの組み合わせは
オリジナリティがあるなと思い、
これでいきましょうと伝えました。



Q: その他のキャラクターデザインに
     関しては何かアドバイスをされたりしましたか?

目に留まるデザインは読者に受けるので、
何かしらチャームポイントがあると
いいですよねという話はしました。

逆に言うとそれぐらいで、
それ以外のことは何も言ってないです。



Q: 禰豆子が竹筒をくわえているのとか、
    普通出てこない発想ですよね。

あれはヤバいですよね。
あの竹筒だけでもう完全に
オリジナリティのあるチャームポイントができている。



Q: 我妻善逸や嘴平伊之助といった
    キャラクターに関しても、
    最初からすでに先生の頭の中にはあったんですか?

そうですね。
僕が先生の担当をさせてもらったのは、
第13話ぐらいまで。

炭治郎が浅草に行くあたりまでなんですが、
同期5人のことや
「柱」の存在も聞いていました。



Q: 「こんなキャラクターが欲しい」と
     片山さんからリクエストをしたことは?

記憶にないです。
編集としていちばん幸せなことですよね。
何も言わずネームが届くのを待っていたら、
面白い話ができているという。

唯一、
「同期の中でモメるやつがいたら
面白くないですか?」
という話はしたかもしれません。

もしかすると(不死川)玄弥が
トゲトゲしているのはそのせいかも。
だとしたら「ごめん、玄弥」ですね(笑)。



Q: 週刊誌の連載は過酷なイメージがありますが、
    先生はスムーズにペースをつかんでいけましたか?

そうですね。
先生はとにかくネームが速いんです。
1~2日で上げてくる。
これはかなり速い部類に入ります。
描きたい内容が明確だからでしょうね。

なので打ち合わせも詰まったことがほとんどない。
編集としてはとてもやりやすいです。

先生は連載までに読み切り作品を
3本描いていました。
読み切りは作画のペースを
作家と編集が試す場でもあります。

その当時から吾峠先生は優良進行だったので、
連載する素養があったんでしょうね。

唯一心配だったのは、
連載が決まってから上京されているので、
アシスタント経験がないことです。

スタッフにどう指示出しを
すればいいのかわからなかった。

そこで、僕が担当していた
『ブラッククローバー』の
田畠(裕基)先生の仕事場に
一緒に見学に行きました。

田畠先生がアシスタントの方たちと
どんなふうに仕事をしているのかを
見せてもらったんです。

たまに目次コメントで交流があるのは、
そこからです。



Q: なるほど! 『鬼滅の刃』でいうと、
    それまでの読み切り作品と比べても
    笑いの要素がグッと増えている気がするんですね。  
    読みやすさを意識して、
    編集サイドからアドバイスしたことなんですか?

いえ、もともとご本人の素養として
ギャグが好きというのが大きいです。

先生は『銀魂』が大好きなんですよね。
だからギャグを入れるのもお好きで。

それが善逸や伊之助といったキャラクターが出そろい、
ボケとツッコミの役割が明確になってからは
さらにわかりやすくなったと思います。



<<自分のために描かない。
  読者が楽しんでくれるかどうか>>

『銀魂』の空知英秋先生が
昨年末のニコニコ生放送の手紙でネタにした
「俺は長男だから我慢できた。
 次男だったら我慢できなかった」
など、『鬼滅の刃』には面白いセリフが多いですよね。

きっとキャラクターのいる世界に入り込んで、
見てきているから、
そういうセリフが出てくるんでしょうね。
けっこうロジカルなんですよ、先生のセリフは。

これは僕の予想ですが、
大正時代は生活が大変なうえに
兄弟姉妹も多かったので、
今の時代よりも「長男」という意識が強い。

きっと炭治郎もことあるごとに
「長男なんだから」と言われていたはずです。

そういった時代背景を考慮して、
ああいったセリフになったのではないかなと。



Q: そんな考察が…。
    ちなみに『鬼滅の刃』がグッとくるところの
    ひとつが、敵である鬼側にも
    ドラマがあることだと感じているんですが、   
    こういった鬼の描き方もすべて先生のアイデアですか?

僕からは何も言っていないです。
きっと先生の中で
「鬼ももともと人間なんだから、
人間としての生があるべき」
という考えがあるんだと思います。

吾峠先生との打ち合わせで思うのは、
常に「それが物語として適切かどうか」
を見ているということ。

このキャラクターに愛着があるから
こんな展開にしたいという
贔屓(ひいき)がまったくない人です。

先生は、自分のために描いていない。
いつも考えているのは、
読者が楽しんでくれるかどうか。
そこをいちばんに描かれている気がします。



Q: いざ連載が始まってからの
    読者の反響はどうでしたか?

1話目も2話目も評判がよくて。
よく巷で「打ち切り寸前だった」
と言われていますが、
そんな危機はなかったです。

当時から支えてくれた読者のみなさん
あっての『鬼滅の刃』だと思っています。



Q: そうだったんですね。

実際、第7話でセンターカラーを
もらっていますしね。
読者人気が高いので急遽もらえたんです。

ところがセンターカラーは
ページ数が通常より多い設定。

すでにネームができあがっていたため、
急遽追加してもらうことになりました。

錆兎が
「炭治郎は誰よりも大きな岩を切った男だということ」
と話すページは、追加してもらったものです。



Q: 順調なスタートを経て、
    人気を確立したと感じたのはどの時期ですか?

ひとつは手鬼を倒したあたり。
あそこはやはりカタルシスを感じるところなので、
人気がありました。

あとは善逸や伊之助が順に登場し、
キャラクターが出そろったあたりだと思います。

仲間が3~4人いないと掛け合いが生まれないので、
なかなかそれぞれのキャラクターのよさを
引き出しきれないんですよね。

炭治郎と善逸、伊之助の3人のバランスが
とれ始めた頃から
一気に人気が伸びていったと記憶しています。



<<「ヒノカミ」の回は
   原作でもアニメでも「神回」だった>>

片山さんは立ち上げから
初期の頃までを担当されていたわけですが、
今のようなブームは当初から想定されていましたか?

正直まったく想定していなかったです。
とにかくなんとか連載を勝ち取らなきゃと
必死の思いでやっていたので。

といっても、
僕なんかよりずっと吾峠先生のほうが必死だったと思います。



Q: 2019年にはテレビアニメ化され、
    いっそう人気が高まりました。

やはりアニメの力は大きかったと思います。
なかなか感謝の意を伝える場がなかったので、
この場を借りて述べさせていただきたいのですが、
(『鬼滅の刃』のアニメを手がけた制作会社の)
ufotableさんが原作の面白い部分を
しっかり汲み取ってつくってくださったおかげで、
本当に面白い作品になりました。

僕自身、アニメをリアルタイムで
全話観たほどハマりました。



Q: ヒノカミ神楽を初めて繰り出す
    アニメの第19回は、作画や演出含めて
    「神回」だとファンのあいだで盛り上がりました。

スゴかったですよね。
僕も純粋に視聴者として興奮しました。

原作で初めてヒノカミ神楽が出てくるのが
第40話なんですが、じつはその頃、
担当として戻っているんですよ。

2代目の担当が部署異動することになり、
次が決まるまでのピンチヒッター
として僕が入ったんです。

原作のときから
「ヒノカミ」の回はめちゃくちゃ面白い回に
なった手ごたえがあったし、
先輩からも褒められて、
とてもうれしかった記憶があります。

そんなうれしい記憶が、
約3年越しにあんなスゴい作画で
再び味わえるなんて感動でした。

原作としてもひとつのピークだったので、
あれだけ丁寧に描いてくれた
ufotableさんの感度の高さは
素晴らしいなと思いました。



Q: これだけのブームは、
    『ジャンプ』作品でも特殊なのでしょうか?

これまでも多くの人気作品がありましたから
一概には言えませんが、
火のつき方という意味では異例かもしれません。

歴代の人気作品は、
最初から最後までスゴい人気だった。

ですが『鬼滅の刃』のように、
こんなにも右肩上がりで
どんどん人気が加速していったケースは、
入社以来10年間見たことがない。

編集者にとってはあきらめずに
やり続けるぞという気持ちにさせてくれる、
夢と希望のつまった作品だと思います。



Q: 改めて『鬼滅の刃』がここまで
    人気を獲得できた理由は何だと思いますか?

小中学生でも理解できるわかりやすさと、
作家性の両方を兼ね備えた作品であること。

吾峠先生が連載を獲得するまでに
何度も葛藤しながら培ったものと、
もともと先生が備えていた
才覚が重なり合った結果が、
『鬼滅の刃』の魅力だと思います。

そういう意味でも、
「先生の力」という一言に尽きますね。



Q: この熱狂を、吾峠先生自身は
    どう受け止めていらっしゃるのでしょう?

もちろんうれしいとおっしゃっていますが、
先生自身は何も変わらずに、
粛々と漫画を描き続けています。

職人なんですよね、先生は。
いつも物語のことをいちばんに考えている。
それは出会った頃から変わりません。



Q: 『鬼滅の刃』に限らず
    『呪術廻戦』『チェンソーマン』など、
    いわゆる異能・異形系のバトル漫画が
    『ジャンプ』でも増えている気がします。 
    これまでの『ジャンプ』とは
    また少し違う流れのように感じるのですが、
    編集部のみなさんはどうとらえていますか?

よく新人の作家さんから
「ジャンプらしい要素が必要ですか?」
と聞かれるのですが、
少なくとも僕は今まで作家さんに
「ジャンプらしいものを書いてくれ」
と言ったことは一度もありません。

基本的に『ジャンプ』は
否定の歴史だと思っています。

スゴい作家さんが現れて、
人気が盛り上がって、
そこからまた先人とは別の面白さを
備えた作家さんが現れて、
新しいブームが生まれてくる。

そんな否定の歴史を繰り返して、
『ジャンプ』は今日までやってきました。



Q: じゃあ、よく聞く
    「友情・努力・勝利」という標語は?

僕は一度も標榜したことはないです。

むしろジャンプほど作家性と向き合い、
作家さんの持ち味を活かそうとする
雑誌はないと思っています。

大事なのは、作品が面白いかどうか。
そして、対象の読者に伝わるかどうかだけ。

もし今の『ジャンプ』を読んで
「こんなのジャンプじゃない」と
離脱する方がいても、
それは自然なことなんだろうなと。

なぜなら『ジャンプ』は
変わり続けるものだから。

異色の作品と呼ばれるものが出てくるのは、
とても健全なことだと僕はとらえています。

(出典元)https://news.livedoor.com/article/detail/17760339/

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