『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった <連載を獲れなければ漫画家を辞める覚悟の1年>
しかし、連載開始に至るまでの道のりは
決して平坦ではなかった。
いかにして『鬼滅の刃』は生まれたのか。
誕生ヒストリーを明かしてくれたのは、
著者の吾峠呼世晴氏と二人三脚で走り続けた
『鬼滅の刃』初代担当編集・片山達彦だ。
『ブラッククローバー』『呪術廻戦』など
「週刊少年ジャンプ」の人気タイトルを
担当してきた片山だけが知る“舞台裏”とは?
『鬼滅の刃』の骨肉となったであろう
『ジョジョの奇妙な冒険』『HUNTER×HUNTER』
『銀魂』『僕のヒーローアカデミア』など
歴代『ジャンプ』漫画とのリンクや、
主人公・竈門炭治郎の誕生秘話、
人気キャラクター・冨岡義勇の衣装の秘密まで、
ファンならずとも必読のインタビューをお届けする。
Q: 片山さんが吾峠呼世晴先生に
出会ったのは、いつでしょうか?
『肋骨さん』という作品を描き上げた 2014 年です。
Q: 第70回JUMPトレジャー新人漫画賞佳作を受賞した
処女作『過狩り狩り』から数えて、3作目ですね。
はい。『過狩り狩り』当時は
別の編集者がついていたんですが、
彼が副編集長になるタイミングで、
僕が担当になりました。
『過狩り狩り』は、
『鬼滅の刃』の前身になった作品でもあります。
先生は「どうせダメだろう」と
処分しようと思っていたらしく、
そのときにご家族から
「どうせならいちばん好きな雑誌に送ってみたら」
と後押しされて、初めて『ジャンプ』に投稿した
とおっしゃっていました。
Q: 片山さんは『過狩り狩り』を読んで、
どんな感想を持ちましたか?
正直に言うと、わかりにくいなと(笑)。
1回目に読んだときは
そこまで面白さがわからなくて、
2回目に初めて構成や振りのうまさに気づきました。
ただ、圧倒的な才能は周りも認めていましたし、
僕も感じていました。
Q: どんなところに才能を感じたんですか?
セリフの力が圧倒的ですよね。
あんな言語体系、あまり見たことがない。
先生のセリフは、借りものじゃないんです。
『ジャンプ』では「キャラクターを立てよう」
と耳が痛くなるほど指導されます。
しかし先生は
「そのキャラクターが言っているな」
と感じられるセリフを自然と書けていた。
そこにいちばん才能を感じました。
Q: 『鬼滅の刃』を読んでいても、
“キャラ立ち”を感じます。
僕が「先生は本当にスゴい!」
と圧倒されたのは、
『鬼滅の刃』の第8話。
倒した手鬼に対し、
竈門炭治郎が手を握るシーンです。
それまでも他の新人作家さんとは
一線を画しているとは思っていましたが、
あそこで改めて、
こういうキャラクター造形ができるところが、
この人の才能なんだと感動しましたね。
Q: 炭治郎の優しさがよく表れていますよね。
じつは吾峠先生は打ち合わせの際、
あの手を握るくだりを
「少年漫画らしくないからカットしようかな」
とおっしゃっていたんです。
それを聞いて僕が、
「ここだけは絶対に入れてください。
こんな主人公見たことないです。
これが炭治郎ですよ!」
と熱弁をふるった記憶があります(笑)。
Q: 漫画をつくるうえで、
吾峠先生とはどんな形で
やりとりをしていたんですか?
『鬼滅の刃』の連載が始まるまで、
先生は地方にいらっしゃいました。
そのため電話で打ち合わせをし、
そのあとネームをeFaxで受け取って、
添削して、また電話でやりとりして…
という感じですね。
Q: 吾峠先生はネームを描くのは速いほうですか?
とてつもなく速いです。
あとで聞いたら、
寝ないで描いていたことも多かったそうで…
その尋常ではない速度から、
絶対にプロになるんだという熱意を感じました。
Q: 片山さんから見て、
吾峠先生はどんな方ですか?
純粋な人ですよね。
そして言葉の本質を見ている人です。
Q: 言葉の本質?
何かのやりとりで
「主人公をカッコよくしましょう」
という話になったんですよ。
すると吾峠先生が
「カッコいいって何ですか?」と。
たしかに何だろうと
思っていろいろ話をしてみたら、
吾峠先生のカッコいい見た目の一つに
『ゴルゴ13』があったと判明。
Q: ゴルゴ!
そして“中身”は、
とある漫画で読んだそうなんですけど、
車に轢かれて死んだ猫を、
みんなが「気持ち悪い」
と引いた目で見ている中、
汚れも気にせず抱えて持っていける男だと。
要は、自己犠牲ですよね。
そこで初めてふたりのあいだで
共通認識が持てたんです。
Q: 面白いですね。
誤解がないように言っておくと、
吾峠先生は決して揚げ足取りで
聞いているわけじゃないんです。
先生は物事の真理が知りたいだけ。
なあなあの会話は通用しないし、
わからないことは恥ずかしがらずに
きちんと質問される。
先生とのやりとりを通じて、
僕自身も勉強になりました。
Q: 片山さんから見て、
吾峠先生はどんな作品から
影響を受けていると感じますか?
『ジャンプ』漫画は全般的に読んでいる
とおっしゃっていましたし、
何かしら影響を受けていると思いますけど、
とくに『ジョジョの奇妙な冒険』
はファンだとおっしゃっていますね。
たとえば呼吸法は『ジョジョ』の
波紋の呼吸に通じるところがありますし、
不死身の鬼というモチーフも
『ジョジョ』を彷彿とさせるものがある。
Q: 添削という話が出ましたが、
修正のリクエストに対して
吾峠先生は柔軟な方ですか?
ケースバイケースですね。
たとえば、藤襲山の最終選別
(第6話から第8話)のときに
「冨岡義勇が見守っているのはどうですかね」
と提案してみたら、
「義勇はすごく有能な剣士なので、
こんなところで審査する立場ではないです」と。
そこをなんとかとお願いしても、
決して首を縦には振りませんでした。
そもそもこの鬼殺隊入隊のための
修業のエピソードも、
序盤に置くには引きが弱いかなと思い、
もう少し短くできないかと相談したんです。
そのときも
「普通の人間がそんなに
すぐ強くなるわけないと思います」
と、決してご自身の信念を
変えることはありませんでした。
だからといって頑固というわけではありません。
たとえば鱗滝(左近次)さんは、
当初は天狗のお面をつけていなかったんですよ。
Q: え、そうなんですか?
初めにネームを見せてもらったときは、
普通のおじいさんでした。
ちょっとインパクトがないですよね
という話をしたら、
原稿の段階ではお面をつけていた(笑)。
聞いてみると、
「よいのが思いつかないんで、
とりあえずお面をつけてみました!」
とおっしゃって。
だから、鱗滝の素顔を知っているのは
僕だけなんです(笑)
Q: 見てみたいです(笑)
なるほどと思ったら柔軟に対応してくれますし、
自分が信念を持って描いているところに
関しては絶対に譲らない。
物語として成立しているかどうか、
をいちばん大切にされている方なんだと思います。
<<連載を獲れなければ漫画家を辞める
――覚悟の1年>>
Q: ここからは『鬼滅の刃』連載開始に
至るまでのお話を聞いていきたいと思います。
まずは『ジャンプ』連載までの
システムを教えてもらいますか?
編集部内で連載会議があって、
そこで連載の可否を決定します。
連載会議に出席できるのは、
編集長、副編集長、班長以上のメンバーで、
人数は10人ぐらい。
最終的な決定権は編集長にありますが、
独断で決めるというよりも、
何時間もかけて議論を重ねながら、
みんなの総意で連載が決まるシステムです。
Q: その連載会議には
何話分のネームを提出するんですか?
3話分です。
Q: 『鬼滅の刃』の連載が始まったのが
2016年11号から。それまでのあいだに
『少年ジャンプNEXT!!』に『文殊史郎兄弟』、
『ジャンプ』本誌に『肋骨さん』、
『蠅庭のジグザグ』が読み切りとして
掲載されましたが、読者の反応はいかがでしたか?
悪くはないが、もう一つ人気が欲しい…
といったところでした。
編集部の反応もそのような感じで。
連載会議でもいろんな連載ネームを
出していたんですけど、
なかなか通らなかったんです。
Q: 連載会議に落ちたとき、先生はどんな反応を?
最初に落ちたときは、
大変ショックを受けていたかもしれませんが、
それ以降は一切弱いところは見せませんでした。
「次また頑張ります」と、
鋼の精神で黙々と新しいネームを送ってくれましたね。
Q: 聞くところによると、
一時期は「漫画家を辞める」
とおっしゃったこともあったとか。
2015年のあいだに連載を獲れなければ辞めると。
吾峠先生は、作家になるべくして生まれた人。
だから何としてでも連載会議を通るような
ネームにしなくてはと焦りましたが、
『蠅庭のジグザグ』、『鈍痛風車』と
連載ネームが続けて落ちてしまい、
もうあとがなかった。
そこで、『過狩り狩り』を読んだときに
感じた課題に立ち戻ってきたんです。
Q: というと?
吾峠先生は、誰もが認める才能の持ち主。
だからこそ、その作家性を生かしたいと
思ってやってきたんですが、
マニアックな方向に寄りすぎてしまった。
好きな人は好きだけど、
万人受けはしないのかなと。
セリフの力は圧倒的だし、
キャラクターの情緒を
感じさせる描写に長けてはいる。
しかし、『ジャンプ』の対象読者は小中高生。
僕が『ブラッククローバー』の
担当をしていたこともあるんですが、
小中高学生が読んで理解できることが
大切なのではと考えるようになりました。
Q: そこから、片山さんはどうされたんですか?
とにかく周りの先輩にアドバイスを求めました。
そこで出てきたのが、モチーフの話です。
Q: モチーフ?
みんなが知っている要素を使わないと
わかりにくいよねと。
『ONE PIECE』だったら海賊。
『NARUTO -ナルト-』だったら忍者と学園モノ。
歴代のヒット作は、
みんなが知っている要素を使って
新しいものを創り出している。
そういうものが吾峠先生には
必要なんじゃないかと言われました。
とはいえ、何か新しいモチーフを
探すのは相当困難な話。
悩んでいたときに、そうだ、
『過狩り狩り』があると思い出したんです。
『過狩り狩り』はみんなが知ってる
「吸血鬼」のお話で、
しかも「大正時代」、「刀」という
わかりやすいモチーフもある。
これならいけるんじゃないかと。
Q: その提案を受けて、先生は何と?
やってみましょうとすぐに取り掛かってくれました。
僕が『過狩り狩り』を思い出したのも、
じつは『僕のヒーローアカデミア』
の話があったんです。
『ヒロアカ』は堀越(耕平)先生が
デビュー翌年に発表した
『僕のヒーロー』という読み切り漫画が
前身になっている。
よくいう話ですが、
作家は迷ったら原点に帰ることが
大事なんじゃないかと。
Q: そうして生まれたのが、
前身である『鬼殺の流』ですが、
連載会議では残念ながら落選。
主人公は盲目、隻腕、両足義足という設定で、
「世界観のシビアさと主人公の寡黙さ」
が落選の理由だったと
公式ファンブックで語られていました。
そうですね。ただ、
読みやすくなったと世界観に対する
一定の評価は得ていて。
あとは主人公のキャラクターだと。
そして、
また先輩からアドバイスをもらったんですよ。
Q: それはどんなアドバイスですか?
その先輩の私見ですが、
『HUNTER×HUNTER』は変わったキャラクターが
たくさん出てくるものの、
主人公のゴン(=フリークス)は普通の人。
だからこそ読者も感情移入しやすい。
そして、ゴンが中心にいると
他のキャラクターの面白さが引き立つんだ、
というものです。
吾峠先生も同じで、中心に普通の人を置いて、
周りに異常性のあるキャラクターを
配置するとちょうどいいのではないかと。
そこで生まれたのが炭治郎でした。
Q: ぜひその話、
もっとくわしく聞かせてください。
じつは炭治郎というキャラクター自体は、
もともと先生の頭の中にはあったそうなんです。
ただ、先生の中でサブキャラだったんですよ。
Q: え、そうなんですか。
連載ネームが落ちた後に、
主人公を別の人物に変えようという話になり、
「この作品の中に、
もうちょっと普通の子いないですかね」
と聞いてみたんです。
すると、
「炭を売っている男の子がいて、
その子は家族全員殺されたうえに妹が鬼になっちゃって。
男の子は妹を人間に戻すために鬼殺隊に入るんです」
と話し始めたんです。
それ、めちゃくちゃ主人公じゃないですかと。
宿命を背負ったキャラクターは、
物語を動かす推進力になる。
その子を主人公にして
もう一度書きましょうと先生に提案しました。
そうして生まれたのが、『鬼滅の刃』でした。
Q: 初めて『鬼滅の刃』のネームを
受け取ったときのことは覚えていますか?
覚えています。
たしか他作品の原稿を受け取りに行った
タクシーの中だったと思うんですが、
第1話の義勇の
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
というセリフにしびれましたね。
なんだこれ、こんなセリフ見たことないぞと。
話も非常にわかりやすくなっているし、
炭治郎も好感が持てる。
だけど何よりインパクトがあったのは
義勇のあの一言。
はからずも『過狩り狩り』を
読んだときから感じていた
セリフの力に圧倒されたという感じですね。
これは(連載会議に)通るだろうと確信しました。
Q: その連載ネームと、
実際に私たちが読んでいる
第1~3話に違いはあるんでしょうか?
ほとんどないです。
デザインがちょっと違うぐらいで。
Q: デザインとは?
連載ネームでは義勇が着物だったんです。
それを見て「もうちょっと大正感が欲しいですね」
という話を僕から先生にしました。
次に先生が描いてきたのが、
今の詰め襟スタイル。
詰め襟に羽織りの組み合わせは
オリジナリティがあるなと思い、
これでいきましょうと伝えました。
Q: その他のキャラクターデザインに
関しては何かアドバイスをされたりしましたか?
目に留まるデザインは読者に受けるので、
何かしらチャームポイントがあると
いいですよねという話はしました。
逆に言うとそれぐらいで、
それ以外のことは何も言ってないです。
Q: 禰豆子が竹筒をくわえているのとか、
普通出てこない発想ですよね。
あれはヤバいですよね。
あの竹筒だけでもう完全に
オリジナリティのあるチャームポイントができている。
Q: 我妻善逸や嘴平伊之助といった
キャラクターに関しても、
最初からすでに先生の頭の中にはあったんですか?
そうですね。
僕が先生の担当をさせてもらったのは、
第13話ぐらいまで。
炭治郎が浅草に行くあたりまでなんですが、
同期5人のことや
「柱」の存在も聞いていました。
Q: 「こんなキャラクターが欲しい」と
片山さんからリクエストをしたことは?
記憶にないです。
編集としていちばん幸せなことですよね。
何も言わずネームが届くのを待っていたら、
面白い話ができているという。
唯一、
「同期の中でモメるやつがいたら
面白くないですか?」
という話はしたかもしれません。
もしかすると(不死川)玄弥が
トゲトゲしているのはそのせいかも。
だとしたら「ごめん、玄弥」ですね(笑)。
Q: 週刊誌の連載は過酷なイメージがありますが、
先生はスムーズにペースをつかんでいけましたか?
そうですね。
先生はとにかくネームが速いんです。
1~2日で上げてくる。
これはかなり速い部類に入ります。
描きたい内容が明確だからでしょうね。
なので打ち合わせも詰まったことがほとんどない。
編集としてはとてもやりやすいです。
先生は連載までに読み切り作品を
3本描いていました。
読み切りは作画のペースを
作家と編集が試す場でもあります。
その当時から吾峠先生は優良進行だったので、
連載する素養があったんでしょうね。
唯一心配だったのは、
連載が決まってから上京されているので、
アシスタント経験がないことです。
スタッフにどう指示出しを
すればいいのかわからなかった。
そこで、僕が担当していた
『ブラッククローバー』の
田畠(裕基)先生の仕事場に
一緒に見学に行きました。
田畠先生がアシスタントの方たちと
どんなふうに仕事をしているのかを
見せてもらったんです。
たまに目次コメントで交流があるのは、
そこからです。
Q: なるほど! 『鬼滅の刃』でいうと、
それまでの読み切り作品と比べても
笑いの要素がグッと増えている気がするんですね。
読みやすさを意識して、
編集サイドからアドバイスしたことなんですか?
いえ、もともとご本人の素養として
ギャグが好きというのが大きいです。
先生は『銀魂』が大好きなんですよね。
だからギャグを入れるのもお好きで。
それが善逸や伊之助といったキャラクターが出そろい、
ボケとツッコミの役割が明確になってからは
さらにわかりやすくなったと思います。
<<自分のために描かない。
読者が楽しんでくれるかどうか>>
『銀魂』の空知英秋先生が
昨年末のニコニコ生放送の手紙でネタにした
「俺は長男だから我慢できた。
次男だったら我慢できなかった」
など、『鬼滅の刃』には面白いセリフが多いですよね。
きっとキャラクターのいる世界に入り込んで、
見てきているから、
そういうセリフが出てくるんでしょうね。
けっこうロジカルなんですよ、先生のセリフは。
これは僕の予想ですが、
大正時代は生活が大変なうえに
兄弟姉妹も多かったので、
今の時代よりも「長男」という意識が強い。
きっと炭治郎もことあるごとに
「長男なんだから」と言われていたはずです。
そういった時代背景を考慮して、
ああいったセリフになったのではないかなと。
Q: そんな考察が…。
ちなみに『鬼滅の刃』がグッとくるところの
ひとつが、敵である鬼側にも
ドラマがあることだと感じているんですが、
こういった鬼の描き方もすべて先生のアイデアですか?
僕からは何も言っていないです。
きっと先生の中で
「鬼ももともと人間なんだから、
人間としての生があるべき」
という考えがあるんだと思います。
吾峠先生との打ち合わせで思うのは、
常に「それが物語として適切かどうか」
を見ているということ。
このキャラクターに愛着があるから
こんな展開にしたいという
贔屓(ひいき)がまったくない人です。
先生は、自分のために描いていない。
いつも考えているのは、
読者が楽しんでくれるかどうか。
そこをいちばんに描かれている気がします。
Q: いざ連載が始まってからの
読者の反響はどうでしたか?
1話目も2話目も評判がよくて。
よく巷で「打ち切り寸前だった」
と言われていますが、
そんな危機はなかったです。
当時から支えてくれた読者のみなさん
あっての『鬼滅の刃』だと思っています。
Q: そうだったんですね。
実際、第7話でセンターカラーを
もらっていますしね。
読者人気が高いので急遽もらえたんです。
ところがセンターカラーは
ページ数が通常より多い設定。
すでにネームができあがっていたため、
急遽追加してもらうことになりました。
錆兎が
「炭治郎は誰よりも大きな岩を切った男だということ」
と話すページは、追加してもらったものです。
Q: 順調なスタートを経て、
人気を確立したと感じたのはどの時期ですか?
ひとつは手鬼を倒したあたり。
あそこはやはりカタルシスを感じるところなので、
人気がありました。
あとは善逸や伊之助が順に登場し、
キャラクターが出そろったあたりだと思います。
仲間が3~4人いないと掛け合いが生まれないので、
なかなかそれぞれのキャラクターのよさを
引き出しきれないんですよね。
炭治郎と善逸、伊之助の3人のバランスが
とれ始めた頃から
一気に人気が伸びていったと記憶しています。
<<「ヒノカミ」の回は
原作でもアニメでも「神回」だった>>
片山さんは立ち上げから
初期の頃までを担当されていたわけですが、
今のようなブームは当初から想定されていましたか?
正直まったく想定していなかったです。
とにかくなんとか連載を勝ち取らなきゃと
必死の思いでやっていたので。
といっても、
僕なんかよりずっと吾峠先生のほうが必死だったと思います。
Q: 2019年にはテレビアニメ化され、
いっそう人気が高まりました。
やはりアニメの力は大きかったと思います。
なかなか感謝の意を伝える場がなかったので、
この場を借りて述べさせていただきたいのですが、
(『鬼滅の刃』のアニメを手がけた制作会社の)
ufotableさんが原作の面白い部分を
しっかり汲み取ってつくってくださったおかげで、
本当に面白い作品になりました。
僕自身、アニメをリアルタイムで
全話観たほどハマりました。
Q: ヒノカミ神楽を初めて繰り出す
アニメの第19回は、作画や演出含めて
「神回」だとファンのあいだで盛り上がりました。
スゴかったですよね。
僕も純粋に視聴者として興奮しました。
原作で初めてヒノカミ神楽が出てくるのが
第40話なんですが、じつはその頃、
担当として戻っているんですよ。
2代目の担当が部署異動することになり、
次が決まるまでのピンチヒッター
として僕が入ったんです。
原作のときから
「ヒノカミ」の回はめちゃくちゃ面白い回に
なった手ごたえがあったし、
先輩からも褒められて、
とてもうれしかった記憶があります。
そんなうれしい記憶が、
約3年越しにあんなスゴい作画で
再び味わえるなんて感動でした。
原作としてもひとつのピークだったので、
あれだけ丁寧に描いてくれた
ufotableさんの感度の高さは
素晴らしいなと思いました。
Q: これだけのブームは、
『ジャンプ』作品でも特殊なのでしょうか?
これまでも多くの人気作品がありましたから
一概には言えませんが、
火のつき方という意味では異例かもしれません。
歴代の人気作品は、
最初から最後までスゴい人気だった。
ですが『鬼滅の刃』のように、
こんなにも右肩上がりで
どんどん人気が加速していったケースは、
入社以来10年間見たことがない。
編集者にとってはあきらめずに
やり続けるぞという気持ちにさせてくれる、
夢と希望のつまった作品だと思います。
Q: 改めて『鬼滅の刃』がここまで
人気を獲得できた理由は何だと思いますか?
小中学生でも理解できるわかりやすさと、
作家性の両方を兼ね備えた作品であること。
吾峠先生が連載を獲得するまでに
何度も葛藤しながら培ったものと、
もともと先生が備えていた
才覚が重なり合った結果が、
『鬼滅の刃』の魅力だと思います。
そういう意味でも、
「先生の力」という一言に尽きますね。
Q: この熱狂を、吾峠先生自身は
どう受け止めていらっしゃるのでしょう?
もちろんうれしいとおっしゃっていますが、
先生自身は何も変わらずに、
粛々と漫画を描き続けています。
職人なんですよね、先生は。
いつも物語のことをいちばんに考えている。
それは出会った頃から変わりません。
Q: 『鬼滅の刃』に限らず
『呪術廻戦』『チェンソーマン』など、
いわゆる異能・異形系のバトル漫画が
『ジャンプ』でも増えている気がします。
これまでの『ジャンプ』とは
また少し違う流れのように感じるのですが、
編集部のみなさんはどうとらえていますか?
よく新人の作家さんから
「ジャンプらしい要素が必要ですか?」
と聞かれるのですが、
少なくとも僕は今まで作家さんに
「ジャンプらしいものを書いてくれ」
と言ったことは一度もありません。
基本的に『ジャンプ』は
否定の歴史だと思っています。
スゴい作家さんが現れて、
人気が盛り上がって、
そこからまた先人とは別の面白さを
備えた作家さんが現れて、
新しいブームが生まれてくる。
そんな否定の歴史を繰り返して、
『ジャンプ』は今日までやってきました。
Q: じゃあ、よく聞く
「友情・努力・勝利」という標語は?
僕は一度も標榜したことはないです。
むしろジャンプほど作家性と向き合い、
作家さんの持ち味を活かそうとする
雑誌はないと思っています。
大事なのは、作品が面白いかどうか。
そして、対象の読者に伝わるかどうかだけ。
もし今の『ジャンプ』を読んで
「こんなのジャンプじゃない」と
離脱する方がいても、
それは自然なことなんだろうなと。
なぜなら『ジャンプ』は
変わり続けるものだから。
異色の作品と呼ばれるものが出てくるのは、
とても健全なことだと僕はとらえています。
(出典元)https://news.livedoor.com/article/detail/17760339/
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